ボクが専門学校に通っていた頃、お盆休みで岩手の実家へ帰省していたある日の夜の事。
友人と遊びに行き、その帰りにスクーターで1人自宅へ向かっていた時。
小さめの川に架かる橋を過ぎると坂道になっていて、その坂を下ってくる女性の足元をライトが照らしました。
白い浴衣のような和服姿で足袋に草履を履いて歩いているのがはっきり見えたので、「祭りか集会の帰りかな」くらいに思っていました。
そして近づいていき、すれ違うはずの場所で、すれ違う事はありませんでした。
誰もいません。
うわーっ、と声をあげ、300メートルほどの実家へなんとか辿りつきました。
この辺り、このような目撃証言をよく聞く場所で、父も目撃した事があるそうです。
岩手県は物怪がたくさんいるんでしょうか。県民の半数以上はこういった不思議なものを見た経験があるように思います。あの遠野物語が生まれた地なので尚更です。
そういえば生前、祖父が若い頃によく狐に騙されたと話していました。
夜、村の集会が終わり帰宅する途中、提灯の行列が家の方へ向かっていたので、後をついて行くと全然違う方へ行ってしまったそうです。
狐の尻尾が月に照らされると提灯に見えるんだと話していました。騙されたというより見間違いだと思いますが。
昔は街頭も無く、真っ暗な世界。研ぎ澄まされたその闇の中に、物怪たちは息を潜めていたのかもしれません。
昔からの天狗、河童、座敷童子の伝承が数多く残っています。
もしかしたら、こういった伝承には何かのメッセージ、教訓が含まれているのかもしれません。
伝承でふと思いだしましたが、スクーターで渡った橋の下を流れる川、「大工と鬼六」という昔話の舞台なんだそうです。(※諸説あり)